日々の仕事で「常に問題の解決に追われている…」「似たような問題が繰り返し発生する…」といった問題に悩まされていませんか?
 
その原因は、「問題解決力」ならぬ「問題発見力」にあるかもしれません。
 
今回は、問題発見力の概要や問題発見力を鍛えるコツ、おすすめの書籍などを解説します!

問題発見力とは?

そもそも「問題発見」とはどういうことを指すのでしょうか?
 
クエスチョンサークルでは、図のように、表面化した問題を生み出している潜在的かつ本質的な問題に目を向け、根本治療を目指すことだと考えています。
 
表面化した問題の解決は対症療法にすぎず、根本治療はできません。本質的な問題を根本から解消するためには、「問題解決」だけでなく「問題発見」が重要なのです。

問題発見と課題発見はどう違う?

「問題」は事象を指し、「課題」は問題を解決するための取り組みを指す。
つまり、「課題」は「問題」を解決するための手段である。

<例1>
「問題」…地球温暖化により、異常気象や海面の水位の上昇が懸念される(→事象)
「課題」…地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を削減すること(→取り組み)
 
<例2>
「問題」…リピート率の悪化によって売り上げが下がっている(→事象)
「課題」…リピート率を上げるための施策が急務である(→取り組み

ちなみに上記のように、「問題」と「課題」は異なると考えられます。
 
「問題」は事象であり、「課題」はその解決手段。このように捉えると、「課題発見(取り組み)」の前にまずは「問題発見(本質的な事象)」の重要性が理解できるのではないでしょうか。
 
また、ITなどの進化によってさまざまな「解決手段」が可能になった今、解決法を見つける以上に、本質である「問題発見」の重要性が見直されているといえます。

問題発見力に不可欠な「問い」

問題発見するうえで必要不可欠なのが、「問い」です。
 
ここで、偉人が残した言葉を見てみましょう。

もし私がある問題を解決するのに1時間を与えられ、しかもそれが解けるか解けないかで人生が変わるような大問題だとすると、はじめの55分間は自分が正しい問いに答えようとしているのかどうかを確認することに費やすだろう。そして、適切な問いさえ分かれば、その問題を私は5分で解くことができる

アルベルト・アインシュタイン

経営における最も重大な過ちは、間違った答えを出すことではなく、間違った問いに答えることだ

ピーター・ドラッカー

このように問題発見力においては、本質的な問題を導く「問い」がポイントになってきます。
 
答えというものは、問いがあって初めて見つかるもの。「良い答え」を出すためには、「良い問い」が必要なのです。
 
問題発見力を高めるには、その前提として「問い」があることを知っておきましょう。

自力で向上できる?問題発見力を鍛える3つのコツ

ここからは、問題発見力を鍛えるための3つのコツについて、具体的にご紹介していきます。

コツ①いきなり答えを探さず、問いを持つ

問題発見力を鍛える1つ目のコツは、問いを持つこと。
 
先述したように、問題発見では「(適切な)問いを持つこと」がカギとなってきます。
 
最初からいきなり解決手段や答えを探そうとせずに、まずは問いを立てましょう。そうすることで視野が広がり、本質的な問題を発見しやすくなります。
 
また、実践する際には、1つだけでなく複数の問いを立てることをおすすめします。
 
例えば、営業なら「クライアントは誰か?」「コロナでどのような変化が生まれているか?」など様々な角度の問いを持つことで、見過ごしていた本質的な問題発見に繋がります。

コツ②原因論より目的論で考える

2つ目のコツは、目的論で考えること。
 
原因を追求していく「原因論」よりも、どうありたいかを考える「目的論」を意識してみましょう。
 
というのも、問題を再発見・再定義する際には、「なぜできないのか?」と原因を探るよりも、「こうしたい」「こうありたい」と目的を持って成功イメージを描いた方が、前向きなエネルギーが生まれやすいのです。
 
ビジネスで壁にぶつかるときは、個人や組織に問題があるケースも少なくありません。
 
だからこそ、ビジョンやありたい姿を明らかにすることで、理想の状態をイメージできるのはもちろん、本質的な問題に気づいて個人や組織の成長を促すことが可能になります。

コツ③ダブルループ学習を取り入れる

3つ目のコツは、ダブルループ学習を取り入れること。
 
ダブルループ学習とは、既存の枠組みや前提そのものを疑い、新しい考え方や行動の枠組みを取り込む学習プロセスのことです。
 
日常の業務を繰り返していると、既存の枠組みや前提を疑うことはなかなか難しいですよね。しかし、ここであえて現状を見直し、新たな前提や枠組みを取り入れることで、本質的な問題を発見しやすくなります。
 
例えば、過去の取り組みをもとにPDCAを繰り返して改良を図る「シングルループ学習」に対し、「ダブルループ学習」では、「そもそもこの商品は時代のニーズに合っているか?」といった前提そのものを見直すのが特徴です。

思考にも変化を起こす!?「問題発見力」の事例とメリット

問題発見力を発揮することには、実際どんなメリットがあるのでしょうか?「本質的な問題を再定義できる」「問いによって思考が変わる」という2つのメリットについて解説します。

メリット①本質的な問題を再定義できる

まず1つ目のメリットは、これまで見過ごしていた「本質的な問題」を再定義できることです。
 
例として、問いをテーマとした組織開発プログラム「クエスチョンサークル(※)」の参加者の振り返りをもとに、本質的な問題発見に繋がった事例を見てみましょう。
 
(※)クエスチョンサークルとは、チームで繰り返し問いを立て、問題を様々な角度から捉えることで、本質的な問題を発見するプログラムです

最初の
問題意識
自分に総務領域にナレッジがない事が問題だ

→自分は営業から異動したため、営業系の経歴が長く、労務・総務領域のナレッジを持っていない。総務基礎知識の習得や、資格等へのチャレンジも必要ではないか。
問題意識の
再定義
現状の状況分析ができておらず、かつ他のメンバーを巻き込めていないことが問題だ

→『ナレッジがない』ということに関して、何が必要で何が足りないのかなどが具体化出来ていないため、行動に移せていない。まずはそれを明確にする必要があり、そのうえで、組織として向き合うことが重要ではないかという結論に至った。

最初はビジネスにおける「知識不足」を問題に感じていたものの、本質的な問題は「自己認識力」にあったと問題を再定義できた事例です。
 
繰り返し「問い」を立てるなかで、このように本質的な問題に気づくことができました。

メリット②問いによって思考が変わる

2つ目のメリットは、思考が変わること。問題発見をするために「良い問い」を持つことで、私たち自身の思考もいい意味で変えることができるのです。
 
例えば、上図のように遅刻した部下への「問い」を想定してみましょう。
 
このように「なんで遅刻したんだ?」vs「どうしたら遅刻しなくなると思う?」という2種類の問いによって、部下の思考にも違いが生じます。
 
「なんで遅刻したんだ?」という問いでは、「電車が遅れました」といった遅刻の原因や言い訳しか出てきません。一方で、「どうしたら遅刻しなくなると思う?」という問いでは、「このように工夫します」といった改善策を思考させることができます。
 
これは、その他さまざまなビジネスシーンで応用可能。
 
問題発見においては、原因を探るだけでなく、「どうすればできそうか?」など、問いの立て方も意識してみてください。

問題発見力を高めたい人におすすめの本

最後に、問題発見力を身につけたいと考えている方向けにおすすめの書籍をご紹介します!

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式/山口 周 (著)

本書のなかで、「社会構造やテクノロジーの変化にともない、これまで「優秀」とされた人材は急速に価値を失う」と語る山口氏。
 
そんなかつてのいわゆる「優秀な人材」を「オールドタイプ」、一方で今後大きな価値を生み出していく人材を「ニュータイプ」と表現し、新時代を生き抜く24の思考・行動様式を解説した1冊です。
 
問題発見力についてぜひ注目したいのが、第2章。「問題解決→問題発見」へのシフトや今後高く評価されるという「問題を発見し、提起する人」について、わかりやすく解説されています。

「問題発見力」を磨いて、新時代を生き抜くニュータイプを目指そう

ニュータイプな人材の要素として、今後ますます注目が高まりそうな「問題発見力」。
 
ぜひこれからは、今回ご紹介したような「問い」を活用して、問題解決にとどまらず問題発見にも意識を向けてみてくださいね。
 
また、弊社では「問い」を繰り返すことで本質的な問題発見に導く組織開発プログラム「クエスチョンサークル」を提供しています。
 
「問い」を通した組織開発に興味をお持ちの方は、ぜひ以下からお問い合わせください。