職場や組織をより良くしていくためのアプローチを指す「組織開発」。言葉を聞いたことはあっても、「正直、組織開発って何なのかよくわからない…」というビジネスパーソンは多いはず。
今回は、組織開発の意味や手順、押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

「組織開発」とは?

「組織開発(OD = Organization Development)」とは、簡単に言えば、会社などの組織で起こっている人間的側面にも目を向け、現状をより良くしていく取り組みのこと。
1つの手法のことではなく、コーチングやファシリテーション、チームビルディングなど、さまざまな理論や手法をまとめた概念で、「対話を通した協働関係の構築」が軸になっています。

また組織開発では、マニュアルや制度、組織構造といった「ハード面」だけでなく、コミュニケーションのあり方などの「ソフト面」も含めて課題を捉えます。

組織開発と人材開発の違い

「組織開発」と似つつも、比較的聞き馴染みのある言葉が、「人材開発」です。

「人材開発」といえば、採用や研修、OJT、キャリア開発、自己啓発など、個人のスキルや経験にアプローチしているのが特徴。

一方で「組織開発」は、組織文化の変革、ファシリテーション、チームビルディングなど、組織単位でのアプローチとなるという違いがあります。

組織開発の基本のステップは?

組織開発にはいろいろな手法がありますが、中原淳氏・中村和彦氏は、著書『組織開発の探求』で、組織開発をシンプルに次の3ステップで表現しています。

  • STEP1 見える化
  • STEP2 ガチ対話
  • STEP3 未来づくり

順番に見ていきましょう。

STEP1 見える化

STEP1の「見える化」では、目に見えにくい人間的側面(ソフト面)で起こっていることを可視化し、メンバーそれぞれの捉え方や現状の感じ方を明らかにします。

具体的には、1人1人に対するヒアリングなどによるデータ収集、データ分析、フィードバック・ミーティングなどをおこないます。

この工程を通して、「会議の時間が長すぎる」「朝礼の回数が多すぎて負担」といったメンバーの現状認識を知ることができるのです。

STEP2 ガチ対話

STEP2は、「ガチ対話」。メンバーで集まり、日頃は伝えられていない意見などを話していきます。すると、対話を通して捉え方や思い込みに変化が起き、新たな気づきを得られます。

例えば「発言しにくく、会議の意味を感じられない」といった意見が出たとしましょう。すると、「そもそも会議に対する受け身の参加姿勢に問題がある」と、思いがけない気づきに出会えるかもしれません。

このように、STEP2では対話を通して『何が根本的な問題なのか』を探求しながら、問題に対する共通認識の獲得を目指していきます。

STEP3 未来づくり

最後のSTEP3が、「未来づくり」です。このステップでは、STEP2のガチ対話で得た問題への共通認識をもとに、どのように対策していくのか、解決策を計画します。

つまり、ここでようやく「取り組みの計画」と「取り組みの実行」のフェーズに入るのです。

組織開発においては、STEP1とSTEP2のように、「問題解決」を考える以前に、根本的な問題を見定める「問題発見」が重要であることに気をつけましょう。 

組織開発で重要な「対話」と「協働」とは?

組織開発においては、「対話」と「協働」という2つの要素が重要視されています。

それぞれのポイントを抑えておきましょう。

「対話」におけるポイント

双方向のコミュニケーションには、「対話」のほか議論や討論などありますが、対話のポイントは「質問」と「視点の違いを楽しむ」ことです。

「討論」は対立構造を作り勝敗が生まれます。仮に自分が勝ったとしても、負かされた相手が主張に納得した訳ではありません。そして「議論」は結論を出すためのコミュニケーションです。相手を負かす必要はありませんが、相手との合意形成を目指します。

これらに対し、「対話」は結論を必要としません。「自分」の考えを主張する議論とは異なり、「相手」の考えを受け止め、互いの理解を深めるコミュニケーションです。

対話では、質問によって相手の考えに耳を傾け、視点の違いを楽しむことによって、自分の中に相手を見出すことが協働のベースとなります。

また、双方向コミュニケーションは、次の4つのレベルに分けられます。

レベル状態特徴
レベル1儀礼的な会話・見せかけ、丁寧で慎重なやりとり
・特定の人が話し、本音は語られない
・聴き方としては、反応しないこともある
レベル2討論・ディベート的で、衝突が起きるやりとり
・率直に語り、自分の見方から主張する
・判断するために聴く
レベル3内省的な対話・お互いについて探究するようなやりとり
・内省的に話す
・相手の話を共感的に聴く
レベル4生成的な対話・未来への探究をするようなゆっくりとしたやりとり
・新しい洞察やアイデアが語られる
・全体から聴き、私と他者に境界がない

初めての話し合いでは、お互いを知らないときによく見られる「儀礼的な会話」にはじまり、順に高いレベルに移行していきます。
率直な意見が言えるような状態になれば「討論」、相手の立場に立ち、お互いを探究するようなやりとりになれば「内省的な対話」、さらに全体にとって望ましい未来に向けて探究するような状態になれば、「生成的な対話」です。

「ガチ対話」のステップでは、この「生成的な対話」がなされることが必要なので、レベル4を目指していきましょう。

「協働」におけるポイント

組織開発は「対話を通した協働関係の構築」とも表現できます。

しかし、近年は仕事が分業され、それぞれの業務を1人が担う「仕事の個業化」が一般化しているのが現状。

「仕事の個業化」ではチームとしての相乗効果が生まれなかったり、教え合いによる学びの機会が失われたり、結果的に長期的な人材育成が難しくなったりといったデメリットもあり、チームで「協業(=協働)する力」が求められています。

とはいえ、個業型から協業型を目指そうとして特定の手法だけ導入しても、決してうまくはいきません。

「仕事の個業化」について、組織課題の基本の3ステップを実践し、仕事の意味づけや捉え方に変化を起こすことが重要です。

組織開発にオススメな本2冊

①マンガでやさしくわかる組織開発/中村和彦(著)松尾 陽子 (マンガ)

マンガでやさしくわかる組織開発/中村和彦(著)松尾 陽子 (マンガ)

マンガの登場人物たちのストーリーを、組織開発の進め方や、大切にされている考え方といった基本を解説した著書。難解な内容もわかりやすく紹介されていて、組織開発について理解を深める最初の1冊にぴったりです。

実践的な内容も紹介されていて、部下との関係やチームマネジメントに課題感を抱えている管理職の方におすすめ。

②組織は変われるか――経営トップから始まる「組織開発」/加藤雅則 (著)

組織は変われるか――経営トップから始まる「組織開発」/加藤雅則 (著)

筆者の組織開発17年の経験から、日本企業特有の課題や実態をふまえて組織開発の方法を紹介している1冊。

ワークショップの設計や進め方など、組織開発のノウハウなどが具体的に紹介されています。かなり実践的な内容になっているので、本気で組織開発に取り組みたい人におすすめ。

ストーリー仕立ての構成になっていて、サクサク読み進められるのもポイントです。

組織開発でチームの成果を最大化しよう!

職場のダイバーシティの高まりや、リモートワークの推進などにより、今後ますます需要が高まっていくことが予想される「組織開発」。

組織の活性化やチームマネジメントに悩みを持っている管理職の方は、学んでおいて損はありません。

チームの成果アップを目指すためにも、ぜひ組織開発への理解を深めてみてはいかがでしょうか。

マンガでやさしくわかる組織開発/中村和彦(著)松尾 陽子 (マンガ)

組織は変われるか――経営トップから始まる「組織開発」/加藤雅則 (著)

※参考書籍