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適応課題とは?ビジネス課題を解決に導いた事例・注意点を解説!

 2020.09.13

 
2019年発売の『他者と働く——「わかりあえなさ」から始める組織論』(著:宇田川元一)で取り上げられたこともあり、少しずつ認知度が高まっている「適応課題」。

ビジネスシーンにおける課題解決を考えるうえでは欠かせない概念で、今後ますます注目されていくと予想されます。

今回は、そんな適応課題の意味や、ビジネス課題を解決するうえでの注意点、活用法などを解説します!
 

 
 

適応課題とは

 
そもそも「適応課題」とは、知識の有無や技術的な可否ではなく、自分自身のものの見方を変えたり、周囲との関係性が変わらなければ(=適応できなければ)解決できない問題のことをいいます。

「適応課題」という言葉が登場するのが、ハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授の著書「最難関のリーダーシップ」。

ハイフェッツ教授は著書のなかで、組織の問題を「適応課題(Adaptive Challenges)」と「技術的問題(Technical Problems)」の2つに分けています。
 
 

適応課題と技術的問題の違いは?

 
適応課題と技術的問題には、どんな違いがあるのかを見ていきましょう。

2つのタイプは、それぞれ次のような特徴があります。
 

適応課題 技術的問題
自分自身のものの見方や、周囲との関係性が変わらないと解決できない問題。自分も当事者であり、問題の一部である。 解決策が既に分かっており、知識やスキルを身につければ解決できる問題。問題は自分の外にある。

 
 ビジネスシーンやプライベートでの課題も、この2つのタイプに分類することができます。

(例1)テレワークという働き方を実現するには?
 【技術的問題】オンラインツールの購入や自宅内でのワークスペース確保
 【適応課題】幼児の育児に追われる妻の理解を得ること

(例2)創業100周年を機に本社移転を実現するには?
 【技術的問題】新オフィスのコンセプト設計や物件探し、オフィス家具の選定や発注
 【適応課題】古い設備を強いられている工場のひがみや引っ越しを伴う社員の対応

このように、問題の解決策を探るときには「技術的問題」と「適応課題」の2つの側面からアプローチすることができるのです。
 
 

適応課題の見落としに要注意!問題解決でやりがちな落とし穴とは?

 
 ビジネスで課題に直面したときにやりがちなのが、「適応課題の見落とし」です。

実際、ハイフェッツ教授は、直面している問題が「適応を要する」にも関わらず、「技術的な問題」として扱ってしまうことが失敗を生むと語っています。


例えば、次の2つの事例は、適応課題を技術的問題として扱ってしまったケースです。
 
 

・サービスの付加価値を高めようと機能の拡充を図ったが、それを扱えるエンジニアが足りなくなってしまった。
・働き方改革を推進するためにテレワークを導入したが、メンバーのエンゲージメントが低下した。

 
 職場など組織での人間関係の問題は、いろいろな要因が絡み合って生じており、「適応課題」が含まれているケースも少なくありません。既存のアプローチを試みるだけでなく、「本当の問題は何か?」と隠れた適応課題にも目を向けてみるのがポイントです。
また、特定の課題において、必ずしも適応課題と技術的問題のどちらかに完全に分類できるとは限りません。
 

 

 
 上記の表のように、適応課題と技術的問題の比重は事例によって変わってくるので、注意が必要です。

「組織課題は“仕組み”を変えれば解決できるはず」なんて技術的問題と決めつけて問題に対処していると、なかなか改善されずに時間と体力を消耗して終わることになりかねません。

「良い人間関係を作れていないのも問題では?」と適応課題にも目を向けて、異なる視点で解決策を探るようにしましょう。
 
 

ビジネス課題を解決に導いた「適応課題」の事例集

 
 適応課題の視点で捉えると、それまで気づけなかった本質的な問題が見えてくるケースも少なくありません。

適応課題を含め、本質的な問題を考えるうえでは、繰り返し問いを立てることで、問題を深掘りしていく「アクションラーニング」の手法が有効です。

ここからは、弊社の組織開発プログラム「クエスチョンサークル」の参加者の振り返りをもとに、適応課題の3つの事例を見ていきましょう。
 
 

事例①ナレッジの課題感に隠れていた「自己認識力」(Aさん)

 
 

最初の
問題意識

自分に総務領域にナレッジがない事が問題だ(技術的問題)

→自分は営業から異動したため、営業系の経歴が長く、労務・総務領域のナレッジを持っていない。総務基礎知識の習得や、資格等へのチャレンジも必要ではないか。

本質的問題
(再定義)
現状の状況分析ができておらず、かつ他のメンバーを巻き込めていないことが問題だ(適応課題)

→『ナレッジがない』ということに関して、何が必要で何が足りないのかなどが具体化出来ていないため、行動に移せていない。まずはそれを明確にする必要があり、そのうえで、組織として向き合うことが重要ではないかという結論に至った。

 
 自分のナレッジ不足に課題を感じていたAさん。しかし、本質的には自己認識の至らなさと、メンバーを巻き込んでの取り組みができていないことに問題があることに気がついたようです。
  
 【Aさんの活用法】
  
明らかになった適応課題をもとに、Aさんは次のような行動計画を立てました。
 
・状況を分析し、自分の成長度や今後のステップを可視化する
・部署のメンバーと分析結果を共有しながら、優先順位などを決める
・自分に足りない部分については、情報収集、セミナー参加を心がける
 
 

事例②ソフトウェア品質でなく「プロジェクト管理」を見直した(Bさん)

 

最初の
問題意識

ソフトウェア品質が悪いのが問題だ(技術的問題)

→単体テスト、結合テストの精度が低く、システムテストで大きな負荷が掛かっている。そもそも当たり前の品質が担保できておらず、単体レベルの障害が多数残存している。

本質的問題
(再定義)
部署をまたぐプロジェクト管理が上手くいっていないのが問題だ(適応課題)

→開発側と品質保証側でのコミュニケーションがとれておらず、求めていることの実態が合っていない。

 
 最初は、現状の課題感として「ソフトウェア品質」を挙げていたBさんでしたが、アクションラーニングで質問へ回答を続けていくうち、「プロジェクト管理(部署間のコミュニケーション)」に問題があると再定義しました。
 
 【Bさんの活用法】

明らかになった適応課題をもとに、Bさんは次のような行動計画を立てました。

・週1で共有会議をおこない、開発側と品質保証側のコミュニケーションロスをなくす
・打鍵チームを新設し、品質管理部隊を明確化して製造品質を上げる
・(必要に応じて)開発製造ガイドラインの一部を見直す
 
 

事例③「顧客に興味を持つ」という新たな視点を得た(Cさん)

 
 

最初の
問題意識

自社製品・技術をアピールするスキルがないことが問題だ(技術的問題)

→せっかくの新しい技術を顧客にうまくアピール出来ていない。使い方が顧客任せになっている。

本質的問題
(再定義)
顧客への興味が足りないことが問題だ(適応課題)

→顧客が喜ぶポイントを知らずにアピールに臨んでおり、欲しい人に欲しい情報を伝えきれていない。

 
営業のCさんは、「自社製品や技術をアピールするスキル」が問題だと考えていましたが、「顧客への興味が足りない」という適応課題での視点に気づきました。アピール力以前に、相手に興味を持ち、ニーズを把握することを重視するようになったとのことです。
 
 
【Cさんの活用法】
 
明らかになった適応課題をもとに、Cさんは次のような行動計画を立てました。
 
・来月までに、既存顧客にの商品使用用途、要求性能を一覧にまとめる。
 
 

ビジネス課題では、適応課題・技術的問題の両面から捉えるべし

 
 様々な問題の解決策を考えるのに必要不可欠な「適応課題」について解説しました。

「ルールや制度が上手く回らない…」「時間がない、人が足りない、忙しい…」そんな問題がなかなか改善されないときは、技術的な問題だけに目を向けていることが原因かもしれません。

これからはぜひ適応課題からのアプローチも取り入れて、新たな解決策を模索してみてください!

適応課題の発見にも役立つ組織開発アプローチ「クエスチョンサークル」にご興味のある方は、ぜひこちらからお問い合わせください