誤解を恐れず、腹を割って思ったことを率直に言えるようになった

株式会社ユービーセキュア 代表取締役社長(当時) 観堂剛太郎様

アプリケーションセキュリティに特化した情報セキュリティ専門企業である株式会社ユービーセキュアは、2020年よりクエスチョンサークルを導入されています。今回は代表取締役社長(当時)の観堂剛太郎様に、導入当時の組織の課題感や、導入後に感じた効果について、弊社代表の宮本寿がお話を伺いました。

最初に突き当たった“採用の壁”

宮本:まずは、ユービーセキュアの事業についてご紹介いただけますか?

観堂様:当社は、ソフトウェアの開発力と、ホワイトハッカーとしての探求力、この2つの力を源泉とし、未だ世にないユニークなセキュリティサービスを生み出し、「セキュリティをより楽にし、世界の持続的な発展に貢献する」ことを目指している会社です。代表的な自社開発プロダクトは、Webアプリケーションの脆弱性スキャナーである『Vex(Vulnerability Explorer)』で、国内市場シェアNo1と評価いただいています。

株式会社ユービーセキュア 代表取締役社長(当時) 観堂剛太郎様

宮本:今回、クエスチョンサークルを導入するに至った、御社の課題や背景とはどういったものだったのでしょうか?

観堂様:私は2017年に社長に就任したのですが、最初に突き当たったのは、“採用の壁”でした。当時、ユービーセキュアは40名前後の規模だったのですが、100名ほどへの人員拡大を図っていました。しかし、なかなか採用できない。例えば、新卒採用で、普通なら夏前くらいに内定を出しているはずなのに、12月くらいまで会社説明会を行っているような状況でした。その原因は割と明らかで、会社の形というか、柱が曖昧だったんです。説明会で会社の方向性がふわっとしていたら、魅力は感じませんよね。
その部分をテコ入れすることで、人を採用できるようになってきました。

その際に見えて来た方向性をさらに進めるため、経営企画室を作り、「ユービーセキュアはなぜ成長を遂げることができてきたのか?」「今後どう事業拡大をしていくのか?」を議論する場を設けました。「ビジョンツアー」という対話の場を設けながら、MVV(Mission,Vision,Value)を作っていこうと。対話の場を作れば、若い層からも意見がでてくるようにもなりました。

 株式会社クエスチョンサークル 代表取締役 宮本寿

クエスチョンサークル導入の経緯

宮本:そのMVV構築において、クエスチョンサークルがどのように機能すると思われたのですか?

観堂様:2019年から取り組んでいますが、実はいまだにMVVは明確な言語には落とし込んでいません。
ある程度議論の土台ができて、いざ経営陣と具体的な「未来」を議論しようとすると「ちょっとまってくれ」と。「未来」は大事だけれども、「目の前」のことでそれどころではないといった、現在抱えている課題に対する、これまで聞けていなかった悩みが共有され、本当にテコ入れすべき問題が明確になりました。

そんな頃に、経営企画室長から「面白そうなものを見つけました」と紹介されたのが、クエスチョンサークルに関してのブログです。

宮本:木村石鹸様のブログ(参考)ですね。

観堂様:はい。部門長が自部門以外に口を出さないといった課題に非常に既視感がありました。

当社には大きくソリューション部門とコンサル部門がありますが、設立時の当社では、そういった区分けもなく、脆弱性診断をしながら、出てくる課題を解決できるようソリューションに実装してゆく両刀使いのスタイルです。

組織が多少大きくなって部門ができても、脆弱性診断などテクニカルコンサルテーションを主に行うコンサル部門がクライアントの未だリリースされていない新規サービスから新たな脆弱性や課題を発見し、ソリューション部門にその脆弱性・課題を共有しながら分析を行い、新たな課題解決のメソッドをプロダクトに落としこんでいくといった、イノベーションを生み出すサイクルが回っていました。
それが、いつの間にか、両部門が分断され、独自に成長を追い求めるようになってしまっていました。

宮本:そうですか、当時の私の印象は、飲みニケーションも含めて、部門長同士のコミュニケーションができているという印象でしたが。

観堂様:飲みにはよく行っていましたよ。特に経営メンバーとは腹を割った関係で、十分に相互理解があると思っていました。しかし、クエスチョンサークルのセッションを経てみると、徹底した自己開示がないままの体裁が保った相互理解だったのかもしれません。大人ですから、それでも関係は築けていたのですが。

クエスチョンサークルを通じて、経営会議の雰囲気が明らかに変わった

宮本:なるほど。第1期は経営会議メンバーで実施することになりましたが、導入時の皆さんの反応はいかがでしたか?

観堂様:導入を検討するために実施したトライアルで、当社の事業運営において課題の一つであった「人財育成」について核心を突く白熱した議論になったことをよく覚えています。
 
普段の会議の中では、限られた時間の中で意思決定をしてゆかなければならないという思いが強すぎて、課題の本質に辿り着けていないこともままあったのではないかと考えます。そう考えると、現場の実際の課題をテーマにして、課題の根本に対する視点を共有し合う形式になるこれは非常に有効だろうと期待できました。
 
経営メンバーもそれを体感したからか、一定の拘束があるにもかかわらず、本格導入に異論はありませんでした。

宮本:半年間のクエスチョンサークルを経て、職場ではどのような変化がありましたか?

観堂様:会議の雰囲気が明らかに変わりました。私がファシリテーションに徹して見守るような議論が生まれるようになりました。また、部門内でも、現場のメンバーから「(上司が)積極的に下に降りてくるようになった。やりやすくなったんですが、何をしたんですか!?」と聞かれるなど、現場でも変化を感じてくれているようです。

360度アンケートやセッションの振り返りで、単なるフィードバックではなく、フラットに皆で振り返った経験を、各部門のプロジェクトの振り返りにも活かせているようです。

クエスチョンサークルの効果

宮本:その変化は、このプログラムのどういった部分が影響していると思われますか?

観堂様:いくつかの要素はあると思いますが、クエスチョンサークルでの自己開示を通じて自己認知がアップデートされながら、相互理解が深まり、結果として信頼関係が築かれたんだろうと思います。信頼関係が土台となって心理的安全性が確保されて、誤解を恐れず腹を割って思ったことを率直に言えるようになったのだろうと。

セッションの中で「健全な衝突」と言われていましたが、それまで遠慮から「見ないふり」をしていたものをしっかり見てくれるようになったのではないかと感じます。特にセッションの合間に実施した「360度アンケート」や「人生曲線」を経て、中盤以降一連の流れが加速した感じがしましたね。
また、“語り呑み”という1対1のサシ飲みルールは盛り上がり、垣根を一層取り払ってくれました。

当社は先にお話したように、各部門の連携が深まれば深まるほど会社の価値が高まる構造をしていますので、率直な意見を躊躇なく交換できるような組織であるべきです。しかし、その状況は当たり前のようでも、しっかり目を向けて投資し続けなければ得られないものだと実感しました。今後も、いろいろな層でセッションを行なっていきたいと思います。

現在、第2期のメンバーがセッションを実施中ですが、そのメンバーの先にいるメンバーにも良い影響がでてくることを期待しています。MVVの言語化はこれからと言いましたが、言語化された際には、それがスーッと浸透して行く土壌が耕されつつあると思います。

宮本:このプログラムを通じて、観堂さんご自身が得られたものとしてはいかがでしょうか?

観堂様:「きく」には「Hear/Listen/Ask」があると言われますが、日々の事業運営の中では、Factを見て「きか」ずとも分かったつもりで決めつけて意見することが多かったのではないかと思いました。しかし、それぞれのFactには背景があったはずで、それを訊ねなければと思い、実践しています。

クエスチョンサークルはチームで動く必要のある組織すべてに有効

宮本:最後に、クエスチョンサークルはどんな課題を抱えた組織に向いていると思われますか?

観堂様:当社だけでなく、昨今はさまざまな仕事が複雑化しており、多様な専門性をもった人員を束ねて、チームでコトにあたることがほとんどなのではないかと思います。チームを束ねることができなければ、良い仕事はできない。チームで動く必要のある組織すべてに有効かなと思います。

また、せっかく関係性を耕しても、畑は放置すると荒れていってしまうので、継続的に行う必要があるでしょうね。第1期のメンバーでも、目の前に大問題が発生すると、ついつい課題解決に集中してしまうこともありますので、ヒトにフォーカスしたこのセッションを定期的に継続したいと考えています。

宮本:ありがとうございます。引き続き、ユービーセキュアの組織開発のお手伝いをさせていただければと思います。

観堂様:今後とも、よろしくお願いします!

クエスチョンサークルでは「“問い”の力で可能性を拓く」をコンセプトに
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