会議や研修、講座などで進行を促進する役割を果たす「ファシリテーション」。
 
「ファシリテーター=司会・進行役」というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実は、ファシリテーションにはそれにとどまらない重要な役割があるのです。
 
今回は、そんなファシリテーションの意味や手法、知られざる重要性、実践テクニック(コツ)についてご紹介します!

ファシリテーションの意味とは?

まずは、基礎となるファシリテーションの意味をおさえておきましょう。
 
一般的にファシリテーションとは、会議などで、発言や参加を促したり、内容を整理して認識を確認したりと、参加者や議論の進行に働きかけて、合意形成や相互理解をサポートすることを指します。
 
ファシリテーションは、結果的に組織・チームの活性化を促進できることもあり、近年注目を集めているスキルです。
 
また、ファシリテーションスキルを発揮する人は「ファシリテーター」と呼ばれています。

ファシリテーションの知られざる「重要な役割」

ファシリテーターの役割は、プログラムの段取りや進行を円滑に進めるだけではありません。
 
ファシリテーターの存在が重要となる理由は、参加者の意識やお互いの関係性など「内面的なプロセス」に目を向け、サポートすることにあります。

会議をはじめとするチーム活動におけるやりとりでは、上図の「コンテントとプロセス」という考え方を適用できます。
 
「コンテント」とは、話している議題や取り組んでいる作業のこと。それに対し、「プロセス」とは、チームの雰囲気やメンバーの意識、お互いの関係性などのことです。
 
実は、会議などのチーム活動の良し悪しは、この水面下にあって目に見えない「プロセス」が左右していることがほとんどなのです。
 
というのも、よくある会議では、話している内容(コンテント)が着目されるため、「メンバーが自主的に参加しているか」「どのように意思決定されているか?」といった水面下のプロセスはあまり意識されません。
 
その結果、感情論が原因で議論が難航したり、声の大きい人が無自覚に意思決定してしまうことで、メンバーの参加意欲が削がれたり、論点がすり替わって「今、何をテーマに話しているんだっけ?」と議論が迷走したりといった問題が引き起こされてしまうのです。
 
だからこそ、スムーズな話し合いの場づくりのためには、「今、メンバーの関わりのなかで起こっていること」という水面下のプロセスに目を向けることが不可欠なのです。

会議をより有意義に!ファシリテーションの「3つのコツ」 

続いて、ファシリテーションを実践するうえでのテクニックにも繋がる3つのコツをご紹介します。
 
会議にファシリテーターを置く際には、ぜひ次のポイントを意識してみてください。

コツ①水面下のプロセスをよく「観察」する 

1つ目のコツは、水面下のプロセスをよく観察すること。ファシリテーターには、その場の「観察力」が必要不可欠です。
 
例えば、会議に沈黙の時間が生まれたとき、その沈黙が「参加者が集中できていない」と観るか、「じっと内省している」と観るかで、その後の関わり方は大きく変わります。
 
意思決定のあり方や傾聴できているか、本音で語れているかなど、その場のプロセスをじっくり観察するよう心がけましょう。
 
ファシリテーター以外には見えにくいプロセスの問題を明らかにし解決に導くには、「振り返り」の時間を設けることが有効です。「ここまでの話し合いはあなたにとってどんな時間でしたか?」「いま、心の中で何が起こっていますか?」と一旦メンテナンスする時間を入れることで、よりよい議論の場づくりにつながります。

コツ②事柄よりも「メンバー・チーム」にフォーカスする

2つめのコツは、メンバーやチームにフォーカスすること。
 
ファシリテーターは、議題となっている問題やその解決手段といった事柄ではなく、「問題に対するメンバーの向き合い方」に目を向けます。
 
ファシリテーションはあくまで「”チームメンバー”が問題解決・目標達成できること」を目的としているのであって、自分自身(ファシリテーター)が問題解決を目指すわけではないことに注意しましょう。
 
議論の進行を担っているとしても、答えは自分が持っているのではなく、チームメンバーのなかにあると考えるのが大事なポイントです。

コツ③ファシリテーターは当事者ではなく「第三者」に委託する

3つめのコツは、コツ①と②をふまえ、ファシリテーターを「第三者」に委託することです。
 
というのも、ここまでお伝えしてきたように、ファシリテーターは「プロセス」を観察し、必要に応じて介入するのが重要な役割。しかし、議題に関わる当事者が会議に参加すると、どうしても「コンテント」(自分なりの問題解決策など)に目が向いてしまうため、客観的な関わり方がとても困難です。
 
コンテントではなくプロセスを観察するには、自分がその当事者(利害関係者)でないことが大切。たとえファシリテーションのプロであっても、テーマについて自分なりの答えを持ってしまう場面においては、ファシリテーションは難しくなります。
 
そういう意味で、ファシリテーションを担うのは当事者ではなく、第三者が適任といえます。

ファシリテーションスキルの入門編!おすすめの本は?

最後にファシリテーションのスキル、能力を高めたいと思っている人向けに、入門編としておすすめの本を紹介します!

改訂新版 プロセス・エデュケーション: 学びを支援するファシリテーションの理論と実際

改訂新版 プロセス・エデュケーション: 学びを支援するファシリテーションの理論と実際/津村 俊充 (著)

ファシリテーションの原理・理論から実践までをわかりやすく解説した1冊。
 
ファシリテーターとしての役割、スタンスやマインドについて丁寧に紹介されているほか、「実習教材」として掲載されているワーク例も充実しています。
 
ただ学ぶだけでなく、実践的にファシリテーターの極意を学びたい人にぴったりです。

ファシリテーションの教科書

ファシリテーションの教科書: 組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ/グロービス (著)、吉田 素文(執筆)

会議を円滑に進め、最大限の成果を上げるマネジメントスキルの腕を磨くための考え方や手法を解説した本。
 
知恵と意欲を最大限に引き出すスキルや、優れたファシリテーターになるための2大要素だという「仕込み」「さばき」のノウハウなど、組織力を高めるためファシリテーションについて本格的に学べます。

ファシリテーションで組織の活性化を

会議後、「時間をかけて議論はしたもの、結局何を話していたのかわからなかったな……」なんて感じた経験があるなら、それは水面下のプロセスの問題かもしれません。
 
ファシリテーションでプロセスに目を向けることは、まだ表面化していない組織課題と向き合い、解決していくことにもつながります。
 
ぜひこれを参考に、ファシリテーションを会議に導入してみてはいかがでしょうか?
 
なお、弊社クエスチョンサークルのセッションでは、プロのファシリテーターが関わり、当事者だけではリーチできないプロセスを取り扱うことで、チームメンバーの関係性の質を改善していきます。
 
興味のある方は、ぜひ以下からお問い合わせください!