カウンセリングではもちろん、近年ではビジネスシーンや日常生活でも活かせると注目を集めつつある「傾聴力」。
 
今回は、日常生活やビジネスシーンで活かせる傾聴力のメリットや、傾聴力を身につけるコツ、すぐに傾聴力を発揮したいという人におすすめな簡単実践術をご紹介します!

傾聴力(けいちょうりょく)とは?

読んで字の如く、全身で身を「傾」けて、相手の話を深く「聴」く「力」を表す「傾聴力(けいちょうりょく)」。
 
「きく」には3つあると言われますが、聞く(Hear)、訊く(Ask)に対し、聴く(Listen)と英語で捉えるとイメージしやすいかと思います。
 
つまり、ただ耳を使って聞いているだけでは、傾聴とはいえません。耳や目、さらには心を相手に傾けて聴く姿勢こそ、傾聴力に必要なことなのです。
 
ちなみに、有名な「メラビアンの法則」では、相手の感情や態度を判断するうえで、視覚情報(見た目、表情、しぐさなど)が55%にものぼるといわれています。
 
ただ話を聞くだけでなく、相手の目を見たり、頷いたり、ときに笑顔を見せたりと、聴く「姿勢」もとても重要です。

本人の「気づき」を左右する?傾聴力の重要性とは

傾聴力が重要視される理由の1つには、語り手が自身の潜在意識にあった「気づき」を得られることにあります。 
 
たとえば、職場で部下の相談に乗るとしましょう。もし上司が傾聴を意識せずに部下の話を聞いた場合、上司は自分なりのアドバイスをし、部下はそれを答えと捉えるでしょう。
 
一方、上司が傾聴して部下の話を聴くことができれば、部下は自身が語ることを通じて「自分の中にある答え」に気づくことができます。
 
つまり傾聴において大事なポイントは、本人が自分の中にある答えを探せているかどうか。
 
傾聴力の有無が、語り手自身が「気づき(答え)」を得られるかどうかを大きく左右するというわけです。

幅広いシーンで使える!傾聴の効果

傾聴力を身につけるメリットは、ただ相手が気づきを得られることだけではありません。
 
そのほかのメリットとしては、(相手に)自己開示してもらえる、(相手の)内省を促せる、心理的に安心・安全な場を作れるといった点が挙げられます。
 
詳しく見ていきましょう。

傾聴の効果①自己開示してもらえる

1つめのメリットは、傾聴してあげることで、語り手本人が自己開示しやすくなること。
 
自分自身についてありのままに伝えることは、お互いの距離を縮めることにつながります。
 
そういう意味では、プライベートで「この人と近しい間柄になりたいな」なんて場面はもちろん、信頼関係を気づきたい上司や部下、同僚との会話や、もっと距離を縮めたい取引先との打ち合わせでも役立つこと間違いなし。
 
自己開示によって、相手とより深い関係を築くきっかけ作りができます。

傾聴の効果②内省を促すことができる

2つめのメリットは、相手の内省を促すことができること。
 
この内省を促すことによって、語り手は自身で考え、気づきを得ることが可能になります。
 
人からもらったアドバイスは、理解できても行動せずに終わってしまうことも多い一方、内省によって自ら得た気づきは、行動に変わりやすいのが特徴。
 
たとえば、傾聴によって職場の後輩の内省を促すことができたら、後輩本人が自分と向き合って得た気づきをもとに、主体的に行動を起こしていくことが可能になります。
 
傾聴で内省を促すことは、このように自走する後輩を育てることにもつながるのです。

傾聴の効果③心理的に安心・安全な場を作れる

3つめのメリットは、心理的に安心・安全な場を作れること。
 
経営者やマネージャー層の方のなかには、部下との面談で、つい指示・命令口調になっていたり、自分の意見やアイデアを押し付けてしまう、という方もいるのでは?
 
このように、上司の自分が語ってばかりでは、部下が腹を割って話したり、素直に自分の意見やアイデアを伝えることはできません。
 
そこで大切なのは、傾聴力を発揮して心理的に安心・安全な場を作ること。
 
相手が部下であれ取引先であれ、自分が語るばかりの「自分のためのミーティング」ではなく、相手に語ってもらう「相手のためのミーティング」を意識することで、信頼関係を築きながら物事を進めることができます。

傾聴力を身につける3つのコツ

アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した「来談者中心療法(パーソンセンタード・アプローチ)。カウンセリングのベースとなる考え方であり、カウンセラーの基本的姿勢として、次の3つが挙げられています。

  • 無条件の肯定的受容
  • 共感的理解
  • カウンセラーの自己一致

これらをもとに、傾聴力を身につけるコツを紹介します。

①無条件の肯定的受容

語り手がどんな人物であろうとも、無条件に肯定・受容する姿勢を持ちましょう。
 
たとえ自分とは異なる考えの持ち主だったとしても、ありのままの相手を受け入れる姿勢が大切。価値観は人それぞれ異なるという前提で相手と向き合います。

②共感的理解

相手の見方や考え方、感じ方を、あたかも自分のことのように受け止める姿勢のことを指します。
 
もし相手の考えに同意、賛成できないとしても、「こう感じたんですね」と受け止めることはできるはず。
 
思いやりをもって、共感的な姿勢で聴くことを意識しましょう。

③カウンセラーの自己一致

カウンセラー、つまり聴き手自身も、ありのままの自分の思考や感情を受け入れている状態であることが重要です。
 
語り手に対して、自分もオープンマインドであることを心がけましょう。

超簡単!誰でもすぐ傾聴を実践できる「1つの方法」

とはいえ、まだまだ「傾聴力を身につけるのは難しそう……」と感じている方は多いはず。そこで、誰でもすぐに傾聴を実践できるおすすめの方法があります。
 
それは、、話の途中で口を挟まず、「本人(語り手)の中に答えがある」と強く信じて聴き届けること。
 
話を聴くうえで、自分の中にある答え(アドバイス)を相手に押し付けたり、自分なりに答えを探そうと根ほり葉ほり情報収集をしている状態は、決して傾聴とは言えません。
 
本人の中にある答えを、語り手自身が見つけられるよう、寄り添う気持ちで話を聴くのがポイントです。
 
話を聴くなかで自分の意見が湧き上がっても口を挟まずに、相手の言葉を最後まで聞き届けてみてください。

傾聴力のある人とない人ってどんな人?

続いて、傾聴力がある人・ない人の特徴についてご紹介します。

傾聴力がある人の特徴

  • 相手をリラックスさせることができている
  • 共感的な姿勢で話を聴くことができている
  • 相手の内省を促すような質問ができている

傾聴力がある人は、上記のような特徴があります。
 
傾聴においては、相手がリラックスして話せるような、共感的な姿勢で聴くことが重要。
 
ときには相手の内省を促すような質問も有効ですが、基本的には「聴く」ことに徹し、安心・安全な場づくりを意識しましょう。

傾聴力がない人の特徴

  • 自分が話してばかりいる
  • 相手に自分の正解を押し付ける
  • 質問のつもりが、詰問や誘導尋問、情報収集になっている

傾聴力のない人は、上記のような特徴が見られる傾向があります。
 
特に、もしも自分のなかに「答え」持っている場合、その答えに誘導したり、押し付けたりしてしまうケースもあるので気をつけましょう。
 
質問する際には、自分のための情報収集ではなく、内省を促すなど相手のためになっていることがポイントです。

傾聴力を強みに変える!自己PRで伝えるときのポイントと例文

傾聴力は、就職や転職活動などの自己PRにおける強みにもなります。
傾聴力を強みとして伝えたいときには、次のポイントを意識してみてください。

  • 傾聴力がビジネスのどんな場面で役立つのか、自身の考えを整理しておく
  • 傾聴する際に、自分が意識していることを説明できるようにしておく
  • 実際に傾聴力が活かされた場面や具体例を挙げられるようにしておく

また自己PRの際には、次のような例文を参考にすると、強みとして伝わりやすくなるでしょう。

例文① 傾聴力を活かして後輩を育成
 
私の強みは、後輩の育成にも繋がる「傾聴力」です。例えば前職では、なかなか成果を出せず、モチベーションが低下して悩んでいる後輩との1on1ミーティングを設定し、腹を割って話してもらう機会を作りました。話を聴いていくうち、後輩自ら、自分が達成したい目標や、それを達成するためにすべきことを積極的に提案してくれるようになりました。言われてやるのではなく自ら提案したことで、後輩のモチベーションは高まり、その後、成果も上がるようになりました。

上記は、傾聴力を後輩の育成に活かしたことを伝える例文となっています。

例文② 傾聴力で、組織づくりに貢献した
 
私は、自身の傾聴力を活かして、組織の改善に貢献しました。大学時代のサークル活動でおこなっていたプロジェクトでは、「メンバーが腹を割って話し合えていない」という課題がありました。そこで、プロジェクトメンバーでのミーティングの時間をつくり、傾聴力を活かしてファシリテーターに徹することで、それぞれが自分の思いを打ち明けられるように工夫しました。そんなミーティングを根気強く繰り返すうち、メンバーが自分の思いやアイデアを積極的に発信できるようになり、プロジェクトを成功に導くことができました。

上記は、サークルなどの組織会議で傾聴力を発揮し、メンバーの思いやアイデアを引き出せたことを伝える例文となっています。

傾聴力が役立つ「コーチング」とは?

一般的に、相手に対して指示・命令するのではなく、支持 ・支援型のマネジメントや能力開発を指す「コーチング」。
 
近年ビジネス界で注目を集めるコーチングでも、傾聴力が役立ちます。
 
というのも、傾聴する際に必要となる、自分の答えを押し付けずに相手の言葉を待つ姿勢や、安心安全な場をつくる肯定的な受容は、相手の主体性を重視するコーチングでも大切になってくるのです。
 
コーチング的な関わり方をしたいときにも、ぜひ傾聴の姿勢を心がけてみてください。

傾聴力を習得したい人におすすめの本は?

最後に、より傾聴力について学びを深めたい人におすすめの書籍をご紹介します!

マンガでやさしくわかる傾聴

マンガでやさしくわかる傾聴/古宮 昇 (著)、葛城 かえで (シナリオ制作)、サノ マリナ(作画)

福祉や医療、教育の現場に加え、日常生活における周囲とのコミュニケーションで大切な「聴く技術」と、その前提として知っておきたい人間の心理をマンガのストーリーを追いながら学べる一冊。
 
傾聴について専門的に学ぶ前の入門書としてはもちろん、友人や部下など、周囲の人の悩みを聞くことえ悩んでいる人にもおすすめです。

傾聴力をプライベートやビジネスでも活かそう

プライベートやビジネスシーンなどさまざまな場面で活きてくる傾聴力のポイントや身につけるコツをご紹介しました。
 
傾聴力を身につけるのは、決して難しいことではありません。
 
ぜひこれを参考に、傾聴力を日々の生活に活かしてみてください!