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オンライン飲み会で思った「ファシリテーション」のヒント

数日前に、とあるお客様(製造業の部長層10名弱)と、オンラインでお酒を片手に懇親する機会がありました。いわゆるオンライン飲み会ですが、ごくごく普通の飲み会が、終わってみればお互いを分かち合うような、とても良い場になりました(手前味噌ですが)。

これを機に「自分がファシリテーターとしてどんなことを意識して『場づくり』をしているだろうか?」と自分なりに振り返ってみましたので、今日はその辺りをまとめてみたいと思います。

研修講師との比較から考える、ファシリテーターの役割

まずは、私なりに思うファシリテ―ターの役割について述べてみたいと思います。

私は顧客とのプロジェクトミーティングにおけるファシリテ―ターを生業の主軸にしておりますが、時に研修講師としての活動もあります。
ファシリテーターの役割について語る上では、研修講師との比較が分かりやすいと思いましたので、その観点からお話しできたらと。

まず、私の中でファシリテーター・研修講師のどちらを担うときでも意識していることがあります。それは「参加者がアウトプットしやすい場づくりをする」ということです。

意見を言う、質問する、感想を言う、リアクションをする…いずれもアウトプットといえると思いますが、アウトプットが増えると、それに比例してインプットの質も高まります。
また、自分の言葉でアウトプットすることで、気づきや学びにつながることはもちろん、AさんのアウトプットがBさんの気づきにつながることもあり、「視点の違い」が場に現れることで、お互いの学びがより一層深くなります。
そのため、私はファシリテーターをする際も、研修講師をする際も、「アウトプットするワーク」や「問い」を積極的に取り入れるようにしています。

では、ファシリテーターと研修講師の違いは何でしょうか?
端的に言うと、「どちらに答えがあるか」だと思っています。

研修の場合、予めラーニングポイントがあるためそこに至るように、あまり脱線しないようプログラムを設計します。(インストラクショナルデザインと言われたりします)そのため、誘導するような要素が強いとも言えるでしょう。

一方で、顧客とのプロジェクトミーティングの場合、答えは参加者やチームの中にあり、私自身は持っていません。
そのため、その場で出た様々な意見や、それに対するメンバーのリアクションなど、その場で生まれた偶発性を活かしながら場をつくっていく必要があります。

自分の中に答えがあるのか、参加者に答えがあるのかどうかで、場への関わり方は大きく変わります。

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狙いは「視点の違い」をつくること

では、私の場合、場づくりをする際にどのようなゴールを持ち、どんなプロセスをイメージしているかお話ししていきます。

前述の通り、研修の場合は講師側が答えを持っているので、例えば「今日は○○と○○を覚えて帰ってもらおう」など、ゴールを描きやすいと思います。
一方、参加者が答えを持っている、顧客とのプロジェクトミーティングなどの場合、
ファシリテーターの立場は何をゴールとすると良いでしょうか?

あくまで私の場合ですが、「視点の違いから生まれる健全な衝突が発生すること」を一つのゴール(マイルストーン)としています。

安心安全な場をつくり、お互いが自己開示しやすくなり、他者のことを受け止めやすくなり、腹を割って話せるようになる。それによって、視点の違いが生まれ、結果的に衝突や混乱、葛藤が発生する。そして、最後にはそれを分かち合う。これが、私がいつも目指している場づくりのゴールです。

そのために、例えば、導入部分では自分が意識的に喋り続けながら、参加者にも話しかけ続けたりして、とにかく沈黙が生まれることを避けています。
なるべく早く相手(参加者)が喋り"やすく”なることが大事だと考えているので、始めから闇雲に話をふるのではなく、まずは自分が喋りながら明るい雰囲気をつくり、徐々に参加者に話を振りながら、いずれは参加者が安心して自分から喋ることができる状態を目指しています。
 
他にも、研修やミーティングが終日オンラインである時は、お昼休憩の10分前から雑談タイムを入れたりして、参加者が気軽に話せる場面をつくるきっかけづくりをしています。

参加者同士のコミュニケーションをつくる

そんなプロセスで進めていく中で、常に心得ていることもありまして。

それは、「一定のメンバーだけで盛り上がりすぎない」ということです。盛り上がっている人とそうでない人の溝ができてしまうと、一体感をつくることはなかなか難しくなります。
そのため、私(ファシリテーター)と参加者のコミュニケーションだけでなく、できるだけ“参加者同士”のコミュニケーションが生まれるきっかけをつくることは心得ています。

対面で実施していた頃は休憩中の参加者同士のコミュニケーションをよく観察していました。(あの人、他の班の人とも話しているなぁなど。)
オンラインだとそういった観察はなかなか難しいのですが、それまで大人しかった人がミュートを解除して自分から話し始めたら、チャンスだ!と思っています。「あの人がミュート解除して全体に話すんだったら、私も話そうかな…」と、他の人も思えてきたりして、喋りやすい雰囲気が醸成されていくのです。

「問い」を活用し、段取り8割で臨む

ここまで、「場づくり」において私なりに意識していることをまとめてみましたが、それでも困ったときは、「まずは、話を振っていく」これにつきるかなと。

例えば会議の場合、"挙手するほどではないが、振られたら話す人”は案外沢山います。
会議の進行役からすると、「意見があるなら手を挙げてくれればいいのに!」とついつい参加者に求めがちですが、確かに参加者の立場としては、「挙手するまではないな…」と思う時、往々にしてありますよね(笑)

でもファシリテーターから振れば、意見が出てくることは多くあります。

ファシリテーターという立場は、答えを持っていないからこそ、参加者に問いかけて、考えてもらうことがポイントです。「問い」を投げると、それをきっかけに参加者の意見が出てきて、さらにそれに対して他の参加者の意見が出てきて…という流れができ、次第にファシリテーターと参加者のやり取りではなく、参加者同士の議論が活発になります。そのきっかけをつくるためには、まず、参加者の視点の違いを活かすためのファシリテーターの問いかけがポイントとなるのだと思います。
 
とはいうものの、「問いを投げれば良いと簡単に言うけど、経験値を積まないとなかなか難しいのでは?」と思う人もいるかもしれません。確かに経験値も必要かもしれませんが、私は『段取り8割』だと思っています。事前に「問い」を用意しておくのがとても大事。
(事前の問いの準備が役立つ という話はこちらも参考になるかと。)

事前に「問い」を考える際の観点は、「視点の違いが生まれるのはどこか?」です。
「営業部と製造部では、きっとこのあたりの見方が違いそうだ」
「課長からみた現場と部長からみえる現場にはこのあたりに違いがありそうだ」
など、“それらを議論の場で引き出すために、こんな問いかけをしてみよう!”と、準備しておくことで、本番は臨機応変に対応する余裕が生まれます。

慣れていない人は「当日何が起こるかわからないけどうまく進行できるだろうか」「臨機応変に対応できるだろうか」と、当日に目が向きがちですが、事前に問いを出しておくという段取りを重視するだけで、かなり変わると思います。
事前にアンケートをとって問いを準備しやすい仕掛けをつくったりするのも、当日により良い場づくりをするためのヒントになるかもしれません。

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